1) 災害発生初期対応(従業員の安否確認など)
今回のような災害において、会社(人事労務部門)がまず最初にやるべきことは、被災した従業員及び従業員の家族についての情報収集になります。以下が一般的な流れになります。
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会社は、災害で被災した従業員の情報を把握する責任者(一般的には人事部門長)を任命し、緊急連絡報告体制を設置し、これを関係所属上長へ周知する(この際、できれば各所属長へ確認すべき従業員のリストを連絡先とともに配布します)。 |
A |
各所属上長は、責任者からの指示に従い、従業員の安否確認を行い、さらにその従業員から従業員の家族の安否について確認を行う。 |
B |
各所属上長は、従業員の被災の状況を把握し、責任者へ報告する。 |
C |
責任者は各所属上長からの報告をもとに、代表者と相談の上、会社としての従業員への対応策を決定する。
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従業員への対応策としては、「貸付金制度の適用」、「休暇の付与」、「支援金の支給」、「救済物資の収集・発送の支援」、「慶弔見舞金の支給」などが考えられます。 |
※ |
実際の安否確認は、被災地・避難所への訪問が必要となってくることもあります。十分に安全の確保をしたうえで、必ずチームを組んで訪問するようにしてください。 |
※ |
被災地に入るにあたって、水、食料、防寒具などは現地で調達はできないものとして準備するように心がけてください。被災地の救援・復興活動に支障がでないような行動をとることを第1に考えないといけません。 |
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2)被災され負傷された従業員への対応
<社会保険について>
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今回の震災において厚生労働省は、被災者が医療保険証を提示しなくても、保険扱いで医療機関を受診できるようにすると発表しました。これにより、被災者であれば、氏名や生年月日などを申し出れば、全国どこでも保険証なしで、医療機関で治療を受けることが出来るようになると考えられます。
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A |
厚生労働省は、国民健康保険を運営する市町村などの判断で、窓口負担金の減免や納付猶予ができるようにすると発表しました。これにより、被災者が、医療機関で治療を受けた場合であっても、自己負担分が少なくて済んだり、徴収されることが猶予されたり、毎月の保険料の納付を猶予されるようになると考えられます。
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B |
厚生労働省は、健康保険においては、保険者の判断により、一部負担金等の減免等及び保険料の納期限の延長等 ができること等について、健康保険組合等に連絡したと発表しました。これにより、A同様、健康保険についても、被災者が、医療機関で治療を受けた場合であっても、自己負担分が少なくて済んだり、徴収されることが猶予されたり、事業主が納めるべき毎月の保険料の納付を猶予されるようになると考えられます。
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C |
厚生労働省は、厚生年金保険料についても、納付期限の延長及び猶予を行うよう日本年金機構に通知したと発表しました。これにより、AB同様、厚生年金保険についても、事業主が納めるべき毎月の保険料の納付を猶予されるようになると考えられます。
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<労災保険について>
厚生労働省は、労災保険給付の請求に係る事務処理に関して、請求書提出時の弾力的取扱い、今回地震に伴う傷病の業務場外等の考え方、相談・請求の把握について都道府県労働局に指示したと発表しました。これは、本来、申請時に必要である代表者印の捺印や医師の診断証明等が、災害により困難であっても、手続きを柔軟に対応するということです。
なお、自然災害による事故による負傷は、原則労災の対象になりませんのが、認められるかどうかは個別の案件の発生状況などにより判断されます。被災地においては、現段階では労働基準監督署が閉署している地域も多いと考えられますので、まずは、健康保険で治療を受けその後に、労災保険の手続きをするかどうか検討された方がよいと思います。
3)震災における労務管理 Q&A
今回の災害における事業経営のなかで発生しうる労働法の問題についてまとめました。
1. |
災害により臨時に時間外労働又は休日労働を命じることが出来ますか?
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1. |
可能です。災害その他避けることのできない事由があり、臨時に時間外労働または休日労働をさせることが必要な場合、その必要限度まで従業員に時間外・休日労働をさせることができるとされています。ただし、この場合、事前に所轄労働基準監督署長の許可を受けることが必要です。もし、事態急迫のために所轄労働基準監督署長の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出れば、差し支えありません。なお、年少者(満18歳に満たない者)については、一般労働者と区別して時間外労働及び休日労働は規制されていますが、災害時等の場合は、所轄労働基準監督署長の許可を受けることにより、年少者にも時間外・休日労働・深夜業が認められています。(労働基準法第33条第1項)また、当然ながら割増賃金の支払いは必要となります。
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2. |
災害により「時間外労働・休日労働に関する協定届」(いわゆる36協定)に定める延長可能な労働時間の限度(例/1ヶ月45時間など)を超えて従業員に時間 外・休日労働を命じることができますか?
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2. |
可能です。災害その他避けることができない事由であれば、36協定に定める時間を超えて従業員に時間外・休日労働を命じることができます。この場合も、事後の届出が必要になります。また、当然ながら割増賃金の支払いは必要となります。
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3. |
従業員から、住宅の修理、家族の安否確認、精神的なダメージの回復のため等の理由で、特別休暇を付与してほしいと言ってきています。付与しなければならないのでしょうか?
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3. |
法律上に定めはないので、これらの休暇を与える必要はありません。ですから、新たに特別な休暇を付与する必要はありません。一方、有給休暇として請求された場合には、通常通り、事業の正常な運営の妨げとならない限り、時季の変更はできません(労働基準法第39条)。
また、慶弔休暇規程等に災害休暇や見舞休暇がある場合は、その規程に従い、付与することになります。もっとも、緊急事態ですので、可能な限り、有給の休暇を与えることを検討されてはと思います。なお、当然ながら特別な休暇や有給などを与えない場合においても、本人が会社を休むといった場合に強制労働をさせることはできず、ふつうに欠勤扱いとして、その分の賃金を控除することになります。
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4. |
店舗や事務所が倒壊し、営業できません。従業員を休ませないといけません。給与を支払う必要はありますか?
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4. |
給与を支払う必要はありません。法律上は、会社の都合で従業員を休ませた場合には、その従業員に対して、平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません(労働基準法第26条)。しかし、今回の場合は、自然災害なので、会社の都合ではありません。したがって、災害が直接の理由となって休業した場合は、休業手当の支払いの必要はありません。
一方、お客様が来ないだろう、仕入れができないといった間接的な理由で、店舗や事務所を休みにすると、休業手当の支払いが必要になると考えます。
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5. |
被災した従業員から、給与の前借をしたいという申出がありました。会社として応じないといけないのでしょうか?
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5. |
まず、給与を2つに分けて考えます。既往の労働(昨日まで働いた分)の給与は、災害時には従業員の請求があった場合は、給与支払日前でも支払わなければなりません(労働基準法第25条労働基準法施行規則第9条)。次に、働いていない分の給与に関しては、支払う義務はありません。もっとも、会社が善意で前借を認めることは問題がありません。しかし、その前借した金額を給与から返済させる時(天引き)は注意が必要です。貸付金の返済について、従業員本人と同意しているか(最高裁平成2年11月26日判決 日新製鋼事件)、労使間で、「賃金控除の労使協定」が締結されていることが必要になります。
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6. |
計画停電のため、電車の遅延で従業員が遅刻をしてきました。給与から遅刻した時間分を控除してかまわないのでしょうか?
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6. |
法律上は、ノーワークノーペイの原則がありますので、遅刻した時間分の給与を控除するのは問題ありません。しかし、交通機関の混乱を考えると、本人の責任とするには酷だと考えます。当分の間は、賃金控除は見送るべきだと思います。ただ、この混乱状態が収まり、大半の社員が時間通りに出勤しているにも関わらず、遅刻してくる社員がいれば、賃金控除の対象にしても問題がないと思います。いつまでが特別措置の期間で、いつからが通常期間とするのか、そのけじめが大事でしょう。
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7. |
従業員から、計画停電のため、子供を預けられなくなり、早退をさせてもらいたいという申出ありました。会社は、これに応じなければならないのですか?また、早退を認めた場合の給与はどのように支払えばよいのですか?
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7. |
法律上は、そのような理由で、特別な早退を認める必要はありません。つまり、通常の早退どおりの扱いをすればよく、働かなかった時間の賃金控除を行っても問題ありません。ただ、国としても子どもをもった親に働いてもらおうという方向性を打ち出し、様々な施策を行っています。会社としては、緊急事態ということもあり、できるだけ柔軟に応じることが望まれるでしょう。なお、有給休暇があるのであれば、有給休暇を認めることも検討すべきだです。(平成22年4月1 日から労働基準法が改正され、事業場で労使協定を締結することにより、年次有給休暇が1年に5日分を限度として時間単位で取得できるようになりました。)
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4)緊急雇用対策
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厚生労働省は、今回の地震により事業の継続が困難となった災害救助法指定地域の事業所から、一時的に離職せざるを得ない方の生活を保障するため、事業再開後の再就職が予定されている方であっても、雇用保険の失業手当を支給できる特例措置を実施すると発表しました。
これにより、災害の影響で一時的に失業し、事業再開後に再就職が予定されている人は、本来は雇用保険の失業手当を受給することはできませんが、この要件を緩和して、再就職が予定されている場合でも、仕事に就けない間、失業手当を受給できるようになりました。
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A |
厚生労働省は、失業給付を受給されている被災された方々の便を図るため、特例的に住所地以外のハローワークでも受給できるように実施すると発表しました。本来は住所地のハローワークでないと手続きができませんが、これにより、住所地以外のハローワークでも、失業手当を受給できるようになりました。
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B |
失業の不安や雇用の維持など、被災中の様々な仕事に関する相談に対応するため、特別相談窓口がハローワークの各拠点に設置されます。
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5)内定者への対応
今回の震災により、予定していた新卒採用などが困難になる会社も出てくるものと思われます。内定者の法律上の取り扱いは、原則として「労働契約」自体は締結されていますが、まだ入社していないため、会社の就業規則の適用は受けない立場となります。
よって、 会社が正式に内定を正式にだしている場合、そこには「労働契約」が成立しており、原則として会社側からの一方的な内定取り消しはできません。
ただし、例外として過去の判例において、以下のような合理的な理由があれば内定取り消しが認められています。
@ |
「卒業したら採用する」「この資格が取れれば採用する」といった条件付の内定だったが、その条件を満たされなかった場合 |
A |
採用内定取り消し事由を約束しており、その事由が発生した場合(例えば健康異常の発生など) |
B |
重大な不適格事由の発生した場合(犯罪行為による逮捕、起訴など) |
例えば、今回地震により、予定していた大学の卒業ができなかった、というような場合は@にあたる可能性があります。
ただし、地震の影響での会社の業績悪化や規模の縮小による内定取り消しは、会社側の一方的な「労働契約の解除」になってしまいます。このような場合は、会社はなんらかしらの金銭的保証をしなければならないでしょう。また、本当に採用が困難なほど業績が悪化しいているのかを内定者に説明する義務があります。
裁判例 大日本印刷事件(昭和54年7月20日) 賃金+慰謝料100万円とされた例 |
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最高裁の判決では採用内定により、労働者が働くのは大学卒業直後とし、それまでの間に企業と学生が取り交わした誓約書に記載されている採用内定取消し事由があれば会社が解約することができることを約した労働契約が成立したと認めるのが相当であるとした。
したがって会社の採用内定取消しは、解約の事由が社会通念上相当として是認することができるものである場合のみ取消しが可能としている。
また、企業側からの内定取消しが、上記のような解約権の行使として合理的で社会通念上相当と認められないような場合には、内定を取り消されたものは、債務不履行(誠実義務違反)または不法行為(期待権侵害)として損害賠償を求めることが可能としている。
この事件では、企業側からの内定取消しが社会通念上相当と認められず、内定者の雇用関係が成立したことを前提とした賃金支払いの請求を認めたケースになり、内定者に対しての賃金支払いと慰謝料100万円の支払いを認めたケースになる。
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企業としては、このような非常事態に対して、入社時期を数ヶ月遅らせるたり、内定者へ状況を説明して内定者からの同意をとるなど、できるだけ雇用を確保する努力が求められるでしょう。
6)資金調達について
厚生労働省は、今回の災害の発生に伴う初動の被災生活衛生関係営業者等対策として、特別相談窓口の設置等を平成23年3月11日に行っています。また、激甚災害法に基づく激甚災害として指定されたことを受け、被害を受けた生活衛生関係営業者等の対策として、株式会社日本政策金融公庫における災害貸付の金利引き下げの措置を講ずることとしました。災害貸付の概要としては、被害を受けた生活衛生関係営業者等(営業者、組合、理容師・美容師養成施設)に対して、日本政策金融公庫の災害融資について、特段の措置として、0.9%の金利引き下げが行われます。
7)労働保険料の納期延期措置
厚生労働省は、被災地域における事業所について、労働保険料(一般拠出金を含む)の納付期限の延長及び猶予を行う旨を都道府県労働局長に通知しました(3月14日 労働基準局労災補償部労働保険徴収課)。本来、労働保険料の納付期限は7月(3回に分納する場合は7月、10月、1月)なのですが、被災地の企業は、これを延期することができることになるようです。
8)メンタルヘルス
日本は地震大国と呼ばれているほど、過去に大規模な震災を経験してきていますが、震災による被災者のメンタルヘルスに注目されはじめたのは阪神・淡路大震災以降と言われています。ここでは、阪神・淡路大震災と新潟県中越沖地震の2つの事例から被災者の心理状態が地震発生直後からどのように推移していくのかと、会社(人事労務部門)がどのように対応していくべきなのかについてまとめました。
被災者の心理状態の変化について
@急性期(災害発生直後から数日間)
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被災者の心理状態 |
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災害の直後はその災害の衝撃に圧倒されて、どの被災者も身体や思考や感情、行動などにも様々な影響がでてまいります。集中力や記憶力が低下し、ものごとを合理的に考えることができなくなります。また怒りと悲しみで情緒不安定に陥ることもあります。 |
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メンタルケアの方向 |
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まずは、被災者の身体面や心理的な状態の把握し、深刻な場合は速やかに医療支援チームや専門家・期間につなげるなど緊急支援がケアの中心となります。被災者は非常に不安な状態なので、情報が被災者に十分行き届いているか確認し情報を被災者全員に伝達するようにしましょう。 |
A反応期(1週間から6週間)
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被災者の心理状態 |
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非常事態で興奮し、抑えられていた感情がわきでてくる時期になります。
つらかった出来事がよみがえったり悪夢を見たり緊張感が高まったりイライラ、孤立感が増したりして抑うつ的な状態になることがしばしばあります。
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メンタルケアの方向 |
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被災者の身体面や心理面の状態を継続して把握しておく必要があります。
深刻な状態の人には、短時間でも話を聞く機会を持ち、心情を把握するのとともにカウンセリングや精神科医を紹介するなど必要な援助を行う必要があります。
精神科医やカウンセラーへの紹介は「災害が起きれば誰だって辛い。精神科の先生にお世話になるほどの状態ではない」と被災者から拒否されるケースも多いため職場全体へのメンタルヘルスの教育的なアプローチも必要となります。一見非常に活動的で元気に見える人でもよく話を聞いてみると、不眠になやんでいたり、活発に活動することで不安を忘れようとしている人もいます。自分自身でショックや疲れを自覚できない人もいますので一見、元気な人にも注意が必要です。
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B修復期(6週間〜)
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被災者の心理状態 |
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通常の心理的な回復の過程では、混乱していた感情が徐々に修復されていく時期になります。
つらい出来事を思い出すと苦しくはなりますが少しずつ気持ちがおさまっていき将来へ目を向けていくことができるようになります。
しかし、突然つらい出来事がよみがえってきたり、災害について思い出す話題や場所をさけるケースもあります。この段階になりますと抑うつやアルコール依存症などの問題についても顕在化しやすくなってまいります。
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メンタルケアの方向 |
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この時期の被災者の悩みは多岐にわたり将来への不安、生活設計など実生活での不安と複雑に絡み合っています。ひたすら被災者の聞き手となり、時間をかけて気持ちを受け止めていくような支援が必要となります。
会社は、被災者が被災による変化した現実を受け入れ、合理的に問題解決ができるように、訴えに傾聴し心理的な支えとなるような支援が必要となります。
災害時のメンタルヘルス対策ですが、被災した従業員が被災前の通常の心理状態に回復させることが目的となります。会社は被災した従業員がショックを受けた後の心理的な状態について、専門的な医療機関へ紹介する必要があるのかどうかの知識と判断が必要となります。判断を誤ってしまうと、従業員の抑うつ状態が悪化し、最悪の場合は従業員が命を落としてしまうというケースもあります。
また、被災者の悩みは時間が経つにつれて多岐にわたり実生活での不安と複雑に絡み合っていくため、ケースによっては数年にわたる長期的なフォローが必要になることも覚悟しなくてはなりません。
被災後は職場全体へのメンタルヘルスの教育などを行い、管理職や被災者を含めた従業員のメンタルヘルスへの理解を深め、深刻な状態の人には、短時間でも話を聞く機会を持ち、心情を把握するのとともにカウンセリングや精神科医を紹介するなど必要な援助を行う体制を構築していく必要があります。
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9)長期休業者への対応
災害発生時の長期休業者への対応ですが、会社で明確に長期休職などについてあらかじめ定めておく必要があります。阪神大震災でも、社員が長期の休職をした場合の明確な基準を定めていなかったため、社員が帰郷、会社の近くに住む家がない、家族の介護などの理由で、会社に籍だけ置いて1年も2年も出社しないといったケースも見受けられました。
社員が会社に籍を置いて長期間出社せず、いつ復帰するのかがわからない状態が続きますと、新しく社員を補充することもできず業務に大きな支障が出てまいります。
こういった長期休職者への対応策ですが、以下のことについて定めておくと問題を解決することができます。
1.会社で通常の状態に戻った日を決める。
災害発生後、会社もしばらくの間は通常業務ができない状態であったり、交通網や親せきの安否確認などの理由により多くの社員が出社できない時期も出てくると思います。こういった「非常事態」の時は社員の休職の起算日にはせず、ある程度、通常通りに業務が遂行できる状態となった際に「非常事態解除宣言」を全社員に発信して、会社が通常の状態に戻ったことを全社員に伝えます。
2.休職期間をスタートさせる(非常事態解除宣言の日より)
通常の状態に戻った日から就業規則や休職規定の定めに従って従業員の欠勤日数や休職期間のカウントを開始する。就業規則や休職規定などであらかじめ休職について定めておいてあることが前提になりますが(休職の規定がない場合は、休職や休職期間について定める必要があります)通常の状態に戻った日を欠勤や休職の起算日とすることで、長期休業をしている社員に対して、期限を設定することができます。
3.休職期間満了が近づいた社員への告知
休職期間に入ったら休職期間中の途中(できれば月に1回以上)や休職期間満了の1ヶ月前に長期休職中の社員と連絡を取り、社員の状況を確認しておきます。なお、休職期間が満了しても職場に復帰できない場合は、原則として自然退職(解雇とは取扱が違います。ルールによる退職であり、定年退職に近いような扱いになります)。
4.休職期間満了
休職期間を満了しても職場に復帰できない場合は、その日をもって自然退職とします。ただし、特別な事由がある場合は、休職期間を延長することも検討すべきでしょう。ここで重要なのは、不公平がないように就業規則にそって取り扱うということです。また延長の期間も明確に再設定しておく必要があります。
長期休職者への対応ですが、まずは会社で通常の状態に戻った日を定めることが必要です。
通常の状態に戻った日を定めることにより、欠勤や休職の起算日を定めることができます。今回のような大災害では、被害にあった方とそうでない方とのギャップが徐々に大きくなり、いつの時点をもって平常にもどったと宣言するかは非常に悩ましいところになります。ただし、いつまでも非常事態体制をとるわけにもいきません。勤務時間が通常の所定時間にも戻ったタイミングがひとつの区切りと考えることもできるでしょう。
いずれにしても、休職期間に入った社員とはこまめに連絡を取り、会社との認識に違いがおきないように、しっかりいとコミュニケーションをとっておくことが重要です。
10)計画停電による休業の取り扱いについて
●会社の責めによって社員に休業を命じた場合について(原則論)
社員に休業を命じた場合の原則ですが労働基準法第26条の定めにより 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中その労働者に、その平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければならないとされております。停電などで会社の営業が難しい場合であっても、原則でお話をいたしますと、会社の都合で社員を休ませる場合は休ませた社員に対して、平均賃金の6割を休業手当として支払わないといけないということになります。
●今回の計画停電により社員に休業させた場合は例外とできる ⇒休業手当を払わなくていい場合がある
ポイント@ |
計画停電中の休業は、休業手当の支給は不要 |
ポイントA |
計画停電の前後の休業についても、休業手当が不要なることがある。 |
ポイントB |
計画停電が実施されなかった場合に、休業としてしまった場合でも、休業手当が不要となることがある。 |
ポイント@ |
計画停電中の休業は、休業手当の支給は不要 |
今回の地震の影響で、計画停電により会社が業務をすることができなくなった為、社員に休業を命じた場合ですが、2011年3月15日、厚生労働省より以下の通達が発表されました。
こちらの通達によれば、計画停電中については、それを理由に休業しても休業手当の支払いは不要ということです。つまり、その間(停電による休業中)の賃金は支払わなくてもいいということです。
ポイントA |
計画停電の前後の休業についても、休業手当が不要になることがある。 |
また、計画停電をしていない休業時間についてですが、通達では「他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには計画停電の時間帯以外の時間帯も使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しない」と表現されております。つまり、 まさに停電中に休業することはもちろん、その前後などの時間の営業が現実的に難しいような場合は、停電中の時間以外の休業についても、休業手当を支払う必要はないということになります。
どこまでが、「計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められる」かは、難しいところです。しかし、例えば、夕方5時まで営業する店において、昼の1時から4時までが計画停電だった場合、4時から5時まで1時間だけ店を営業するというのは、現実的ではないでしょう。このような場合は、午後1時から5時までの休業において、休業手当の支払いは必要ないと認められるのではと考えられます。
ポイントB |
計画停電が実施されなかった場合に、休業としてしまった場合でも、休業手当が不要となることがある。 |
計画停電が予定されていたが、実際には停電がなかった場合ですが、これについても、計画停電の予定に合わせて休業を計画していた場合に、直前に停電が回避されたとしても急に営業できるわけではありません。このようなケースも、休業手当の支払いは必要ないということです。
厚生労働省による通達 |
(基監発0315第1号 平成23年3月15日) |
都道府県労働局労働基準部監督課長 殿 |
厚生労働省労働基準局監督課長 |
計画停電が実施される場合の労働基準法第26条の取り扱いについて |
休電による休業の場合の労働基準法(昭和22年法律第49号。以下「法」という。)第26条の取り扱いについては、「電力不足に伴う労働基準法の運用について」(昭和26 年10月11日付け基発第696号。以下「局長通達」という。)の第1 の1において示されているところである。
今般、平成23年東北地方太平洋沖地震により電力会社の電力供給設備に大きな被害が出ていること等から、不測の大規模停電を防止するため、電力会社において地域ごとの計画停電が行われている。この場合における局長通達の取り扱いは下記のとおりであるので、了知されたい。
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記 |
1 |
計画停電の時間における事業場に電力が供給されないことを理由とする休業については、原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しないこと。 |
2 |
計画停電の時間帯以外の時間帯の休業は、原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業に該当すること。ただし、計画停電が実施される日において、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて休業とする場合であって、他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しないこと。 |
3 |
計画停電が予定されていたため休業としたが、実際には計画停電が実施されなかった場合については、計画停電の予定、その変更の内容やそれが公表された時期を踏まえ、上記1及び2に基づき判断すること。 |
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